the uncomfortable chair

好きなものや思ったことなど。

SHARBO X LT3をめぐる考察(3)

多色ボールペンや多機能ペンには、さまざまな種類の先端(ユニット)を出す/収納する機構があります。今回は、それらの機構について取り上げてみたいと思います。

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上は無印良品の六角6色ボールペン(黒・赤・ピンク・オレンジ・水色・青)、下はイタリア製の10色ボールペンMAGIC 10-IN-1(赤・黒・青・茶・水色・オレンジ・黄・藤色・黄緑・ピンク)。MAGIC 10-IN-1は、後ろのスライドレバー部分を回して、出したい色のユニットに合わせて押し出す仕組み。

まず多色ボールペンや多機能ペンで最もポピュラーな機構は、「スライドレバー式」です。大抵は尾部に複数のスライドレバーがあり、出したい色のレバーをスライドさせて先端を出す仕組みです。この機構の利点は、出したい色を一度で確実に出すことができる点と、別の色の切り替えが一つの動作で済むことです。この確実さと切り替えが容易なこともあって、一つの軸に多数(とりわけ5色以上)のユニットを入れたボールペンのほとんどは、スライドレバー式を採用しています。難点は、どうも安っぽい作りのものが多いというのと、切り替え時の音が大きいという点でしょうか。かつて売られていたような、高級感のあるスライドレバー式のボールペンが現行品でも欲しいところです。

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上はパイロットの振り子式4色ボールペン(黒・赤・青・緑)、下はドイツManufactumのボールペン3色(黒・赤・青)+ シャープペンシル(0.7mm)。パイロットの4色は4色入りとは思えない細い軸が特徴的。Manufactumの多機能ペンは、色表示ではなくドイツ語の表記(SCHWARZ・ROT・BLAU)なのがカッコいい。

ちょっと高級なものになると、「振り子式」があります。振り子式で一番有名なのは、なんといってもラミー2000でしょう(が、あいにく私には買う機会がなく未だ所有していません…)。出したい色の表示を上に向けてノックするとその色が出てくるというなかなか凝った仕組みで、初めてこの機構を知った時は、自分が今見ている色表示をペンが知っているということに奇妙な感覚を覚えました。この機構の利点としては、一つのノックボタン(と多機能ペンではリリース用のボタン)だけで多色を出すことができるので、軸のデザインがシンプルにできるという点が挙げられます。難点は、出したい色の表示をいちいち上に向けるのが思ったより面倒な点と、ペンによっては振り子が中でカチャカチャするのが気になるものもあるという点です。また、違うユニットに切り替える時は、ノックボタンを押して収納→別の色の表示を上に向ける→ノックして出す、という作業が、スライドレバー式よりも面倒です。

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上はゼブラのニュースパイラル2+S(ボールペン2色+シャープ)。中のボールペンリフィルは4Cで、シャープユニットはシャーボXと互換性があるので、0.7mmや0.3mmに変えることもできる。

シャーボXにも採用されている「回転式」は、前軸または後軸を回すことでユニットを切り替える機構です。この機構では、2色のものでは出す方向が決まっているのもありますが、ユニットが3つ以上のものは、回す方向はどちらでもよいものが多く、一方に回し続けるとユニットが順繰りに出入りする機構となっています。この機構上、4色(または3色+シャープ)以上になると、場合によっては何回も出し入れする必要があるのが難点といえるでしょう。振り子式と回転式は、機能的観点と実用的観点から考えても、5色以上のものは恐らく作られていないかと思います。回転式についてはまた別途お話しします。

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ついでに、今回もうひとつ紹介したい機構があります。最近まで知らなかった機構なのですが、このボールペン、ノックをするたびに違う色(黒・赤)が交互に出てくる仕組みなのです(movie)。この機構の名前は分からないのですが、仮に「スイッチ式」と呼んでおきます。これも振り子式同様、ノックボタン一つで複数色を出すことができるのですが、もしこれが3色以上になると、切り替えの際にはかなり面倒なことになると思われます。3色以上のスイッチ式があったかは不明ですが、あったとしても実用的ではなかっただろうことは容易に窺えます。多色ボールペンで一派を作ることなく、今では歴史に埋もれた存在になったのも故なしとしないのでしょうが、内部の作りなど、非常に気になる機構ではあります。

※この記事を書いている途中で気づいたのですが、パイロットに「スイッチ」シリーズ(先端がシャープペンシルで尾部にボールペンが付いた多機能ペン)があるので、この呼び名も変えたほうがいいかもしれません。

それぞれの機構を見てみると、「これが最高」というものが必ずしもあるわけではなく、月並な表現ですが、それぞれに一長一短があります。選ぶ際には、切り替えがすぐ出来たほうがよいか、切り替え時に音が出ないほうがよいか、実際何色あれば十分か、好きな軸はどんなタイプか…などといった諸要素を挙げてみて、その中でどれがいいか比較してみるのが良いでしょう。
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  1. 2018/04/18(水) 00:00:00|
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SHARBO X LT3をめぐる考察(2)

筆記具の「用途」は、書くこと以外にもあると私は考えています。とはいえ、書くことを本来の用途とするなら、それはカッコ付きの「用途」となってしまうのかもしれませんが。例えば会議などで多機能ペンを持っているとき、筆記以外の場面ではどうしているでしょうか? 軸を指で撫でてみたり、シャーボだと右に回したり左に回したり、ノック式だとノックで先端を出したり収めたり、スライドレバー式だと代わる代わるレバーをスライドさせてみたり…。手持ち無沙汰なときは、そんな感じでペンをいじってしまいます。

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スライドレバー式のポピュラーなタイプ。上はパイロットのフレフレビートニック、下は日光ペンの多色ボールペン。フレフレビートニックは、多機能ペンでありながらシャープユニットはフレフレ式になっている珍しいタイプ。日光の多色ボールペンは3つのレバーがあるが、その内2つは黒(0.7、0.5mm)。

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軸の中ほどにスライドレバーがついているタイプ。上はKANOE(森田製作所)の2色ボールペン、下はウィルソン4色ボールペン。ウィルソンのボールペンは、昔のスライドレバータイプをモチーフにしたもので、現在も雑貨屋などで手に入る。見た目は高級そうではあるが、天冠部分がプラスチックでしかも塗装が剥がれやすい。いずれも4Cリフィルを使用できる。

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振り子式の多機能ペン。上はパーカーのベクター3in1、下はパイロットの初代2+1。ベクター3in1は横のボタン、初代2+1はクリップの付け根部分を押すことで、先端を収納することができる。ベクター3in1はシャープユニットが珍しい0.7mm。初代2+1は1977年5月発売で、実は初代シャーボ(1977年12月発売)よりも早く発売されている。ステンレス軸に蝕刻加工のグリップが美しい。

このように筆記具には、書くという側面以外にもfidget(手すさび)としての側面もあると言えるでしょう。むしろ、軸の質感やギミックは、フィジェットにおいてこそ味わえると言っても過言ではありません。それは本来の使用ではないとか、筆記具の本質ではないとはいっても、決して見逃せない要素だと思います。場合によっては、筆記よりもフィジェットとして接する時間の方が長いことだってあるはずです。

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初代シャーボとシャーボX LT3。LT3はボールペンユニットが2色あるが、軸の長さや太さは、ボールペンユニット1色の初代シャーボとほぼ変わらない。シャーボを象徴する初代シャーボの格子カッティングは、シャーボXでもラインナップしてほしいところ。

フィジェットの観点から考えると、このシャーボXは非常にありがたい作りになっています。上で挙げた例でいうと、ノックボタンを押したりレバーをスライドさせるとき、音が出るのが困りものです。誰かが会議中や電話で話しているとき、手持ち無沙汰にカチャカチャ音を立てている人がいると、どうしても音が気になってしまいます。これはシャーボの他のモデルにしても同様で、右に回してカチッ、左に回してカチッ、というのがやはりノイズになってしまいます。その点、シャーボXだと先端を出すときにも音が出ないので、いくらいじっても周りに迷惑をかけません。しかもシャーボXは、従来の「右に回すとシャープペンシル、左に回すとボールペン」とは違い、一方向に回し続けることができる(リレー式に先端が出る)点で、フィジェットの選択肢も広がります。

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実はもう一点、シャーボXには「いじってしまう」箇所があります。シャーボXのクリップはバインダークリップなんですが、これもついつい指で開いたりしてしまいます。とはいえこれはおすすめできません。私も調子に乗って(?)何度もクリップをこじ開けていたら、クリップのバネが若干緩んでしまいました…。くれぐれもフィジェットはほどほどに。
  1. 2018/04/10(火) 00:00:00|
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SHARBO X LT3をめぐる考察(1)

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最近よく使うペンというか、まあ、仕事場はマニアの思いを込めたペンケースなど持っていけるような様子ではないので、これ一本あれば間に合うかと思いポケットに入れているうちに、なりゆきで「一日の中で一番よく使う」ようになったのが、この「シャーボX LT3」です。「間に合わせ」のように書きましたが、もちろん適当に選んだわけではなく、もともとお気に入りの多機能ペンなのは言うまでもありません。

軸の色はハーブグリーンで、現在は廃番色となっています。私がシャーボXのシリーズで好きなのがこのLT3のシリーズで、他にもオレンジフレイムやカーキといった色の軸が出ていました。

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表面はマット仕上げになっています。ブラックではよく見かける加工ですが、それ以外のこういった色でマット仕上げになっているのは、非常に珍しいのではないでしょうか。

カラー軸とはいっても派手な色ではなく、表面加工と相俟って落ち着いた風合いになっています。私がとりわけ気に入っているのは、他のシャーボXのシリーズや他のメーカーのものとは違い、先端から尾部、クリップに至るまで一色で構成されているところです。余計な飾りもなく、落ち着いた感じを台無しにするようなキラキラしたパーツも使われていない。現行のLT3はクリップがシルバーの鏡面仕上げになっており、そこになにか「落ち着きのなさ」を感じてしまいます。ちょっとだけ難点を言えば、このハーブグリーンやオレンジフレイム、カーキなども、クリップが光沢仕上げになっているのが残念なところでしょうか。

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伊東屋で現在(2018年4月)オリジナル販売しているシャーボXは、このLT3と同モデルなのですが、この赤軸はマット仕上げの軸で、クリップもマットブラックになっています。これは他のLT3の色に比べて鮮やかではありますが、それでも落ち着いた感じの仕上げになっています。

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つや消し加工ではありますが、使っているうちに、それなりにつやが出てきました。もちろん表面がツルツルという訳ではなく、ザラザラした表面が、使いこんでいくうちに「こなれて」くる感じというか。木軸の筆記具もそうですが、このこなれて手に馴染んでくる過程こそ、実はマット仕上げの筆記具の醍醐味なのかもしれません。この感触は、例えば研磨剤やみがきクロスなどで同じようにつやを出しても、手に馴染むまでの時間を待たなければ得られないものだと私は思います。

そんなわけで何回かに分けて、このシャーボXや、それに関連する多機能ペンや多色ボールペンについて書いていきたいと思います。

  1. 2018/04/03(火) 00:00:00|
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Pentel Kerry 2.0mm mechanical pencil

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ぺんてるケリーの改造芯ホルダーについては、かなり前から作り方についてはまとめていたのですが、説明するのが多少手間が掛かることもあり、紹介するのをついつい先延ばしにしていました。今回、以前作りかけだったものを見つけたので、これを使いながら紹介しておこうかと思います。

ちなみに今回は、なるべくお金を掛けない方法で改造芯ホルダーを作っていきます。ここ数年、中高生を中心にシャーペンを集めるのが流行っているようなので、お小遣いも限られているであろう彼らにも作ることができるよう、工具も「100円ショップ」で入手できるものを使って紹介します。


【用意する工具】

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棒やすり
今回はダイソーで購入した「ダイヤモンドやすり 3本」と「ダイヤモンドヤスリ 半丸型 160mm」を使用します。

ドリル刃
同じくダイソーで購入した「ミニルーター専用超精密ドリルビット(1.2mm)」を使います。別売りのミニルーター本体は使いません。

パイプカッター
金属パイプの切断に使用します。ホームセンターでは1,000円程度で売られていますが、ダイソーでは400円で売られています。

紙やすり(400番ぐらい)
エポキシ系接着剤
カッター
ラジオペンチ

今回は家にあるものを使いましたが、これらも100均で揃えようとすると手に入ります。接着剤は、エポキシ系のものが一番良いでしょう。いわゆる瞬間接着剤は、工作時の扱いも難しく衝撃にも弱いので、今回の改造には向いてないと思います。

シールテープ
「Lamy noto 改造シャープペンシル」でも紹介しましたが、隙間がある箇所に部品を嵌めるときに使います。巻くとテープ同士が密着してパテのようになります(しかもパテのように固まらないので、何度も部品の取り付け直しが出来て便利です)。これは100均では手に入らないかと思いますが、ホームセンター(水道・水廻り用品のコーナー)で100円台で手に入るかと思います。


【作り方】

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2mmシャープの機構には、タジマツールの「すみつけシャープ〈2.0mm〉メタルヘッド」を使用します。クラッチが比較的小さめで、ケリーの軸に入れても先端に近い位置までクラッチが出るので、残芯も少なく、今回の改造に最適かと思われます。定価は1,260円ですが、ホームセンターでは700円台で売っているところもあるようです。使用するパーツは、内部機構と口金の中に入っている戻り止めゴムです(先端から細いピンなどで突くと口金から取れます)。ケリーの方で加工するのは、口金と内部機構のパイプのみです。


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すみつけシャープの内部機構のパイプは、カッターで切ります。芯をホールドしていない状態で、クラッチから測って9cmほどの長さで切ります。画像を見て分かるように、実際は9cmよりは若干短いのですが、最初のうちは長めに切り、組み立てる段階で調整していくのが良いでしょう。ケリーの金属パイプは、だいたい2cmぐらいの長さでパイプカッターを使って切ります。

この2cmの金属パイプをすみつけシャープのパイプにはめていくのですが、すみつけシャープの樹脂パイプの方が太いので、カッターや紙やすりで削って細くしながらはめていきます。力を入れすぎて折れないように注意する必要がありますが、ある程度入った後は、グリグリ回しながら押し込んでいくと、樹脂パイプの周りを削りながら金属パイプが入っていくようになります。


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パイプカッターを使う際には、最初の段階ではパイプを強く締め付けず、軽く刃を当てる感じで徐々に切っていきます(参照)。パイプを回す際にローラーとの接触でパイプに傷がつくことがあるので、パイプには保護用にマスキングテープを軽く巻いておいた方が良いでしょう。切断したパイプの断面は刃に押されて細くなるので、この細くなった部分は、紙やすりを使って削ります。


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内部機構の白いパーツ(スプリングが格納されている部分)にシールテープを巻き、ケリーの軸に押し込みます。シールテープは、押し込んだ時に若干きついぐらいの太さで巻きます。シールテープの幅が白いパーツより太く、パイプの可動部分に巻き込まれる恐れがあるので、巻いた後に白いパーツの幅に合わせてカッターで切っておきます。一回押し込んで再度取り外したい場合は、パイプを引っ張らずに先の方から棒などで押し出して取り外します。


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口金の加工は、以下で述べる手順(1〜4)で作れば少ない工具で上手くできます。

1. ラジオペンチでケリーのガイドパイプを引き抜きます。この際、パイプをつまんだ状態で折ったりせず、そのまま引き抜くようにしましょう(口金に折れたパイプが残ると加工しづらくなります)。

2. 口金の「先端から急激に太くなっていく部分」までを紙やすりで削っていきます(画像参照)。

3. 削った断面を見ると小さな穴が開いているので、丸棒やすりとドリル刃で穴を拡げていきます。やすりはドリルの要領で回しながら拡げると、きれいに削れます。また、穴の幅が偏らないように、口金の外側と内側とで削っていきます。途中、2mm芯が入るかどうか試しながら削っていきましょう。


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4. 芯が通る太さになったら、今度は口金の内側を「半丸型」のやすりで削っていきます。上の7枚目の画像にあるように、クラッチが軸から飛び出すので、これに引っかからないようにします。上の画像(pic6)の状態で口金を乗せてみて、ノックした時に口金がクラッチに押されて動かないようになればOKです。削った金属粉をきれいに取った後、戻り止めゴムを口金に取り付けます。


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マスキングテープで口金を仮止めして、実際に芯が出るか確認してみましょう。芯が上手く出ない場合は、a. 内部機構のパイプを回して調整する、b. 戻り止めゴムを押し込み過ぎて芯が出にくくなっていないか確認する、c. それでも芯が出ない場合は、内部機構を取り出し、再度シールテープを巻き直して取り付ける…をやってみると上手くいくかと思います。

芯がちゃんと出るのを確認したら、エポキシ系接着剤で口金を取り付けて完成です(はみ出たり、中のクラッチにくっつかないようにできるだけ少量で)。エポキシ系接着剤は固まるまでに時間が掛かるので、取り付けたらマスキングテープを貼って固定しておきます。


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今回、100円ショップに売られている工具だけで作ってみましたが、これだけ上手く出来るとは思っていませんでした。あとは、日本国内だけでなく海外でも手に入る製品を使って改造できないか、検討してみたいところです。ほかにも何か良さそうなパーツがあれば、どなたか教えていただけたらと思います。

  1. 2017/11/09(木) 00:00:00|
  2. 2.0 - 5.8 mm
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Pentel orenznero 0.3mm (PP3003)

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ひさびさの高価格帯・高機能モデルとなる、ぺんてるのシャープペンシル「オレンズネロ」です。このシャープペンシルについては、ぺんてるも相当気合を入れているようで、特別サイトを始めとしてプロモーションも積極的に行われているようです。また、オレンズネロ本体のデザインや、後述するようにグリップの材質や自動芯出し機構などの仕様も、ぺんてるの意欲を感じさせてくれるものとなっています。

オレンズネロについては昨年末あたりから情報が断片的に出始めており、twitterでフォローしている方たちの間でも、いつ発売されるのか、今や遅しと待ち望んでいる状態でした(寸前まで出荷日が未定だったのです)。もちろん私もその待ち望んでいたうちの一人で、入荷日の初日(2月17日)にさっそく購入しました。本レビューでは、その日からしばらく使ってみて、私なりに思ったことを書いてみたいと思います。なお、今回レビューするオレンズネロは0.3mmの方のみになります。0.2mmについては別の機会に(または別の方のレビューに)譲りたいと思います。


機構と書き心地について

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ぺんてる「オレンズ」のシリーズに共通するのは、ガイドパイプから芯を出さずに書ける「オレンズシステム」です。パイプから露出した状態ではすぐ折れてしまうような0.2mmや0.3mmの細芯でも、パイプが外側で芯を保護することで、折れずに書けるようになるという仕組みです。この場合、パイプは芯の摩耗に対応してスライド(後退)しなければなりません。このスライドが滑らかでないと、筆記時にパイプが紙に引っかかる感じになり、書き心地が悪くなります。ノーマルタイプ(ラバーグリップ、メタルグリップを含む)のオレンズではパイプが紙面に触れるたびにパイプが後退し続けます。この機構では、一度のノックで飛び出たパイプの分だけ、ノックをしないで書き続けることができます。

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これに対し、オレンズネロでは「自動芯出し機構」が採用されています。この機構では、パイプが紙面に触れるときはノーマルタイプと同様に後退するのですが、紙面から離れるとパイプが元の長さに戻り、その戻った分だけパイプの中で芯が先へ繰り出される仕組みになっています。つまり、芯を内部のチャックが保持できるかぎり、ノックをしなくても芯が出続け、書き続けることができる機構なのです。これだけ聞くと非常に便利な機構だと思ってしまうのですが、ここには難点があります。つまりこの機構では、パイプが紙面に触れているときにも戻ろうとする力が働いているため、ノーマルタイプのオレンズシステムよりは引っかかりを感じてしまうのです。オレンズネロのサイトでも、この戻ろうとする口金の中のスプリングの力をいかに抑えるか、それに伴い内部機構をいかに調整するかに苦心した様子が書かれているのですが、実際使ってみると、確かに従来のオートマチック機構に比べて改良されているようには思うものの、やはりこの引っかかりや擦れる感じは、ノーマルタイプのオレンズに比べてどうしても気になってしまいます。ただ、この引っかかりは、持ち方を工夫することでかなり改善できます。

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筆記時の先端の部分を拡大すると上図のようになりますが、このとき、パイプの角(◯で囲んだ部分)が紙面をこすると引っかかりを感じてしまいます(とりわけこの図で言えば、左から右へと先端が動くとき、ノーマルタイプですらパイプが後退しにくい状態のため、引っかかりが強くなります)。この角の「当たり」を弱めるには、筆記角度を高くして、芯の接地部分の方を大きくするようにします。つまり、ペンを立てて書くようにすると、引っかかりは軽減できます。

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この時のペンを持つ状態(右)は、従来の持ち方(左)よりも先端を手の側に寄せた状態になります。この高い筆記角度をキープするには、先端をなるべく手から遠ざけないようにする必要があるので、先端の可動域は制限されます。つまり、自動芯出し機構を快適に使うには、ストロークを要する大きな字よりも小さな字向けに使うのが望ましいといえるでしょう。

とはいえ、せっかくのフラッグシップモデルが「細かい字専用」というのは、勿体ない使い方のようにも思われます。そこで個人的には、自動芯出し機構だけでなくノーマルタイプの機構もオレンズネロで使えるようにならないかなと思ってしまいます。実際の使用場面でも、ノック一回あたりの芯の量があれば、何度もノックして思考が中断される…なんてこともほとんどないかと思います(それに「思考の中断」を云々するなら、むしろ消しゴムを使う頻度の方が問題となってくるでしょう)。機構を見るかぎり、口金部分をスプリングがないスライドパイプにすると、ノーマルタイプと同じになるように思われます。オプションパーツでノーマルタイプに変えることができる口金も欲しいところです。


グリップとクリップについて

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オレンズネロの軸で最大のアクセントとなっているのが、この5センチ以上ある長めのグリップです。「樹脂と金属粉を混ぜ合わせた特殊素材」でできた12角のユニークなグリップになっています。特殊素材をはじめて使ったためなのか、型の継ぎ目のような線や仕上げが若干気になるのですが、しっかりとした質感で良い感触だと思います。12角のグリップについてですが、個人的には筆記中に角が指に当たるような気がしました。おそらく、12角グリップは3角や6角のグリップに比べて側面も狭くなるため、指で押さえる時に面だけではなく角にも触れてしまうのがその理由かと思われます。

また実際持った時、持ったところから後の方が重たい感じがしてペンを動かしにくい印象を受けます。これは特殊素材のグリップが長いために、グリップの後ろのほうが「重たさ」となるからと思われます。もちろんつかむ位置を変えると重たさは軽減はされますが、上述した「筆記角度を高くした状態で細かい字を書く」場合では、どうしてもグリップの先をつかむようになってしまいます。デザインにあれこれ言うのは野暮かとは思いますが、このグリップは短くてもいいのではないかと私は考えます。

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クリップはぺんてるのスマッシュと同じもので、小さめです。今までのオレンズシリーズは、クリップが大きくて出っ張っており、さらに軸に固定されて取り外すこともできなかったので、そこだけは何とかして欲しいと思っていました。オレンズネロではデザイン的にも大きなクリップが合わないこともあるのでしょうが、目立たず、また、軸の比較的後部に置かれているため、手にも引っかからない設計となっています。


もうひとつの芯出し機構 - ぺんてるQXシャープ

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オレンズネロを取り上げたからには、比較として触れておきたいシャープペンシルがあります。何故かオレンズネロのサイトでは挙げられていないのですが、1990年にぺんてるはQX(PN305)というシャープペンシルを出しています。値段はオレンズネロと同じ3,000円。12角のグリップといい、全身マットブラックの軸といい、オレンズネロを企画した際に、多少はこのQXを意識していたに違いありません。それでは何故このQXが今回「黙殺」された形になったのでしょうか。それはこのQXの機構が「最適芯出し機構」という特殊な機構になっているからと思われます。この機構は実にユニークで、先端を紙面などに押し付けて離すと、つねに芯が「最適量」露出するという機構なのです。今回のオレンズネロでは、芯がパイプから「露出しない」状態で筆記する機構だったので、QXについては言及し難かったのかもしれません(同様の機構をもつテクノマチックも、今回話題になっていません)。

そこで私が期待するのは、この「nero」シリーズが他の芯径でも展開された場合、0.5mmにこの「最適芯出し機構」を採用してくれるんじゃないかということです。0.5mmなら細芯とは違い、芯をパイプから露出させても構わない(最適量なら折れることもない)し、露出させた方がパイプスライドよりも書き味は良くなるのですから、この機構を採用しない手はありません。まさしく0.5mmのフラッグシップモデルにふさわしい機構と言えるでしょう。ただ気がかりなのは、この機構、非常に便利な機構にもかかわらず、QX以降ほかのシャープペンシルに採用されていない点。もしかしたら非常にデリケートな機構で、展開するのが難しかったのかもしれません。とはいえ、今回のオレンズネロのように意欲的な商品を出したぺんてるですから、これに続いて、また新しい形でQXを復活させてくれるんじゃないかと期待せずにはいられません。

  1. 2017/03/12(日) 18:00:00|
  2. 0.2 - 1.8 mm
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