多色ボールペンや多機能ペンには、さまざまな種類の先端(ユニット)を出す/収納する機構があります。今回は、それらの機構について取り上げてみたいと思います。
上は無印良品の六角6色ボールペン(黒・赤・ピンク・オレンジ・水色・青)、下はイタリア製の10色ボールペンMAGIC 10-IN-1(赤・黒・青・茶・水色・オレンジ・黄・藤色・黄緑・ピンク)。MAGIC 10-IN-1は、後ろのスライドレバー部分を回して、出したい色のユニットに合わせて押し出す仕組み。まず多色ボールペンや多機能ペンで最もポピュラーな機構は、「
スライドレバー式」です。大抵は尾部に複数のスライドレバーがあり、出したい色のレバーをスライドさせて先端を出す仕組みです。この機構の利点は、出したい色を一度で確実に出すことができる点と、別の色の切り替えが一つの動作で済むことです。この確実さと切り替えが容易なこともあって、一つの軸に多数(とりわけ5つ以上)のユニットを入れたマルチペンのほとんどは、スライドレバー式を採用しています。難点は、どうも安っぽい作りのものが多いというのと、切り替え時の音が大きいという点でしょうか。かつて売られていたような、高級感のあるスライドレバー式のボールペンが現行品でも欲しいところです。
上はパイロットの振り子式4色ボールペン(黒・赤・青・緑)、下はドイツManufactumのボールペン3色(黒・赤・青)+ シャープペンシル(0.7mm)。パイロットの4色は4色入りとは思えない細い軸が特徴的。Manufactumの多機能ペンは、色表示ではなくドイツ語の表記(SCHWARZ・ROT・BLAU)なのがカッコいい。ちょっと高級なものになると、「
振り子式」があります。振り子式でよく知られているのは、なんといっても「LAMY 2000」の4色ボールペンでしょうか(あいにく私には買う機会がなく未だ所有していません…)。出したい色の表示を上に向けてノックするとその色が出てくるというなかなか凝った仕組みで、パイロットの多機能ペンで初めてこの機構を知った時は、自分が今見ている色表示をペンが知っているということに奇妙な感覚を覚えました。この機構では一つのノックボタン(と多機能ペンではリリース用のボタン)だけで複数のユニットを出すことができるので、軸のデザインがシンプルにできるメリットがあります。ただ、出したい色の表示をいちいち上に向けるのが思ったより面倒なのと、ペンによっては振り子が中でカチャカチャ音を立てるのが気になるのが難点です。また、違うユニットに切り替える時は、ノックボタンを押して収納→別の色の表示を上に向ける→ノックして出す、という作業が、スライドレバー式よりも手間がかかります。
上はゼブラのニュースパイラル2+S(ボールペン2色+シャープ)。中のボールペンリフィルは4Cで、シャープユニットはシャーボXと互換性があるので、0.7mmや0.3mmに変えることもできる。シャーボXにも採用されている「
回転式」は、前軸または後軸を回すことでユニットを切り替える機構です。この機構では、回し続けることができるものと回していると「行き止まり」になるものがあります。この機構上、隣のユニットを一つ以上「飛ばして」出すことができないので、4色(または3色+シャープ)以上になると、切り替え時に場合によっては何回も出し入れする必要があるのが面倒な点です。振り子式と回転式は、機能的観点と実用的観点から考えても、5色以上のものは恐らく作られていないかと思います。

ついでに、今回もうひとつ紹介したい機構があります。最近まで知らなかった機構なのですが、このボールペン、ノックをするたびに違う色(黒・赤)が交互に出てくる仕組みなのです(
movie)。この機構の正式名称は分からないのですが、仮に「
スイッチノック式」と呼んでおきます。これも振り子式同様、ノックボタン一つで複数色を出すことができるのですが、もしこれが三色以上になると、切り替えの際にはかなり面倒なことが想像できます。三色以上のスイッチノック式があったかは不明ですが、あったとしても実用的ではなかったろうことは容易に窺えます。多色ボールペンで一派を作ることなく、今では歴史に埋もれた存在になったのも由なしとしないのでしょうが、内部の作りなど、非常に興味深い機構ではあります。
それぞれの機構を見てみると、これこそが最高、というものが決してあるわけではなく、月並な表現ですが、それぞれに一長一短があります。マルチペンを選ぶ際には、切り替えがすぐ出来たほうがよいか、切り替え時に音が出ないほうがよいか、実際何色あれば十分か、好きな軸はどんなタイプか…などといった諸要素を挙げてみて、その中で自分にとってどれを優先的な要素とするか考えて選ぶのが良いかと思います。
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- 2018/04/18(水) 00:00:00|
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