ウタペさんのブログで1.3mmケリーの改造シャープを見て、その口金の美しさに自分も作ってみたいと思いました。ウタペさんの場合、1.3mmの内部機構に金属チャックのMilan Capsuleを使っているのですが、今回はこれが手に入らなかったので、別のシャープペンシルを使って改造してみました。ウタペさんのブログの後追い内容とはなりますが、違った作成方法でもあるので、ここは私なりの作り方をなるべく詳細に紹介してみたいと思います。
基本的には以前紹介した「ぺんてるケリー改造2mmシャープ」と手順が似ているので、以下を読む前に当該エントリに目を通していただくのがよいかと思います。
Pentel Kerry 2.0mm mechanical pencilそれでは作り方の説明をしていきます。
【用意する工具など】
棒やすり今回も「ケリー2mmシャープ」同様、ダイソーで購入した「ダイヤモンドやすり 3本」と「ダイヤモンドヤスリ 半丸型 160mm」を使用しましたが、もう少し太めの棒やすりがあったほうが作業が楽に済むかもしれません。
パイプカッター部品に使うシャープペンシルの軸と金属パイプの切断に使用します。今回はダイソーで400円で売られていたものを使用しました。ホームセンターでも1,000円程度で手に入ります。
紙やすり(400番ぐらい)
エポキシ系接着剤
カッター
ラジオペンチ
シールテープ
その他: マスキングテープ、ウエットティッシュ、1.3mm芯(実際に使うもの)接着剤は2種類の液を混ぜるエポキシ系接着剤を使います。いわゆる「瞬間強力接着剤」はこの工作には向いていないので、使わないほうが良いでしょう。

さらに今回、口金の加工にミニドリル刃を使います。このミニドリル刃は、Amazonで400円台で手に入れることができました。この刃の0.9〜1.3mmを使って口金を広げていきます。
【作り方】
今回内部機構に使うのは、Xeno CXの1.3mmシャープです。韓国のメーカーのものですが、輸入雑貨を扱う店などで800〜1,000円ほどで手に入ります。これも金属チャックで、口金には戻り止めパーツもついています。ただ、この内部機構がうまく作動するように取り出すのにちょっと工夫が要ります。
内部機構の作り方
今回取った方法は、分解するのではなく軸の一部を切り取って流用する方法です。パイプカッターで画像の部分あたりに刃を当て切断したものをケリーの中に入れます(
パイプカッターの使い方はこちら)。切断の際に、中のパイプを切らないよう注意が必要です。切断するまで刃を入れる必要がなく、ある程度「溝」ができたらパキッと折り取るのが良いでしょう。「ケリー2mmシャープ」の場合は、内部機構(タジマすみつけシャープ)が小さかったためそのままシールテープを巻いて入れていたのですが、今回のパーツはこのままの状態では太いので、カッターややすりで削って細くしていきます。

こんな感じで細くします。先の口金を嵌めていた部分(螺旋がある部分)の太さに全体を合わせるように削っていきます。耐久性の問題もあるので、先の方はあまりいじらないほうがよいでしょう。この部分は組み立てると隠れてしまうので、偏って削らないようにする以外は、仕上がりはあまり気にしなくてもよいかと思います。刃をあまり立てずに、時々やすりを使いながら少しずつ削って行きましょう。

この太さではまだ軸に入り切らないので、ケリーの軸の内側も削っていきます。軸を分解し、先軸の後ろ側(分かりづらい言い方ですね…)からやすりを入れて中を拡げていきます。先述の通り、100均のやすりでも出来なくはないのですが、時間がかかる(その上慣れないと手が痛くなる)ので、これより太めの棒やすりがあれば、それを使ったほうが良いかもしれません。

内部機構を嵌めたとき、クラッチが画像の状態(ノックボタンを押してないときに、軸から若干奥の位置にある状態)になるまで、内部機構と軸を削っていきます。これ以上出すぎるとクラッチが口金に引っかかり、これよりも奥だと、使えない残芯が長くなったり、クラッチを締めているリングが口金の内側に引っかからないため、クラッチが開かず芯が出なかったりします。
口金の作り方
Xeno CXの口金から、戻り止めパーツ(樹脂製)を取り出します。ドリル刃の0.7mmあたりを使って先から斜めに突けば、簡単に取ることが出来ます。

ケリーの口金にあるパイプは、ラジオペンチで引き抜きます。この時、ペンチで折ったりニッパーで切り取ったりしてパイプの欠片を口金に残さないよう注意してください。パイプの残りがあると、ドリルで加工しにくくなります。パイプを引き抜いた口金を拡げていくのですが、いきなり1.3mmのドリル刃を使うのではなく、だいたい0.9mmあたりから始めて徐々に拡げていくのが良いでしょう。ピンバイスがあると便利ではありますが、ピンバイスなしでもドリル刃のみで加工はできます。穴を拡げていくと、口金先端の金属が薄くなり裂けてしまうことがあるので、紙やすりで先端を少しずつ削りながら拡げていきます。
1.2mmのドリル刃を使うあたりから、実際に1.3mm芯が入るかどうか試してみましょう。1.3mm芯はメーカーによって太さが違うので、注意が必要です。例えばXeno CXに入っている芯や、コクヨの鉛筆シャープに入っている芯は、ぺんてるの芯に比べて若干太くなっています(
参照)。ここでは、実際使う芯を用意しておきましょう。1.3mmのドリル刃が通った段階でも、まだ芯が入らないことがあるかもしれません。その時は1.4mmのドリル刃をつかうのではなく、1.2〜1.3mmのドリル刃を回さずに「出し入れ」する要領で内側を削って調整していきます。芯が通るようになったら、Xeno CXから取り出した戻り止めパーツを口金の中に嵌めます。
内部パイプの加工
ケリーの内部パイプをXeno CXの内部パイプに取り付けます。ケリーの金属パイプは尾部から6cmあたりをパイプカッターで切り取ります。パイプの切断面は刃に押されて細くなっているので、この細くなった部分は紙やすりを使って削ります。

「ケリー2mmシャープ」のときはすみつけシャープのパイプが太かったのですが、今回は逆にXeno CXの内部パイプが細いので、軸にシールテープを薄く巻いてその上からケリーのパイプを嵌めていきます(シールテープは巻きにくいのでマスキングテープを使ってもOK)。この際、内部機構は全長9cmくらいになるようパイプを切っておきましょう(後でパイプをさらに切って調整します)。

金属パイプを嵌めたら、内部機構にシールテープを巻き、ケリーの軸に入れます。シールテープはあまり巻きすぎないようにしましょう。
組み立て・完成
口金をマスキングテープで仮止めして、芯を出してみましょう。うまく出ない場合は、内部機構を取り出して再度嵌めて調整(クラッチが偏って出ていないかなど確認)してみましょう。芯がうまく出るようになったら、芯をクラッチした状態で尾部の長さを調整します(クラッチしていない状態で調整すると、クラッチしたときにノックボタンが潜りすぎてしまう場合があります)。
芯を出した状態で、口金をエポキシ系接着剤で取り付けて完成です。今回は「ケリー2mmシャープ」に比べてクラッチが前の方に出ているので、接着剤が内側につかないよう注意してください。外に接着剤がはみ出た場合は、固化する前に不織布のウエットティッシュなどで拭き取リましょう。取り付けたら接着剤が固まるまでマスキングテープで固定しておきます。

1.3mmシャープは樹脂チャックのものが多く、金属チャックを内部機構にしたい場合はパーツとして使えるシャープペンシルが限られます。今回のXeno CXは金属チャックで良かったのですが、機構が軸と一体になった作りなので、これをうまく機能するように取り出すにはどうしたらいいかかなり悩みました。思いつけば意外と単純な方法ではあるのですが、こういった方法を思いつくのが、その方法に従って完成させることよりも、筆記具改造の醍醐味なのかなぁとも思ったりします。
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- 2019/04/09(火) 19:00:00|
- 0.2 - 1.8 mm
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直線的な六角軸とアルマイト処理された軸の色が美しい、ロディアのスクリプトシャープです。ぺんてるケリーを思わせるような口金の曲線も凝っていて、私の好みです。2016年に発売されたオレンジ、ブラック、シルバーと2017年限定のブラウンに加え、2018年はネイビーが限定色として発売されました。

太めの六角軸は指との接触面も大きく、その分持ちやすくなっています。また、粗めにヘアライン加工された表面も程よい感じで、ツルツルと滑るのではなく、サラサラとした触り心地です。がっしりとして質感の良い金属軸ではありますが、18グラムで重い印象はあまり受けません。

先端のスリーブはスライド式になっています。製図用シャープ並みにスリーブが長く、最長で4ミリほどの長さになります。また、内部はクッション機構です。スライドスリーブとクッション機構の組み合わせなので、
以前紹介したプラチナ「ハヤーイ」のように「簡易先端プッシュ」ができます。書いているうちに芯の量が足りないと思ったら、先端を紙面に押し付け、離してみましょう。するとスリーブだけが後退して芯が出てくるので、ノックしなくてもまた書き続けることができます。スリーブが長いので、三回ぐらいはノックせずに先端プッシュで書きづづけることができるかと思います。

軸はやや短め(全長128ミリ)で、手に収まる扱いやすい長さです。短めの軸やスライドスリーブになっているのは、シャツやズボンのポケットに入る長さや、ポケットの中でパイプが引っ掛からないのを意識しているのかもしれません。またクリップが比較的長めになっているのも、ポケットから抜け落ち難くするためのように思えます。ロディアの製品ですから、サイズからして「ブロックロディア」No.11やNo.12あたりと一緒にポケットに入れることも念頭に置いているかもしれません(画像のブロックロディアはNo.12)。

短軸でありながらクリップは長めに作られているため、筆記時には手に当たりやすくなっています。また、軸に合わせて幅広の平らな面になっているため、この面を下にしてクリップを指に乗せるときは、指とクリップとの接触が大きくなります。軸の方はヘアライン加工で滑りもあるのですが、このクリップは艶出し加工で滑りにくいので、接触が大きいと指にくっつき、引っかかりを覚えます。クリップの表面もヘアライン加工になっていると、この引っかかりは軽減されるかもしれません。
ちなみにブロックロディアを使うときは、例の濃い罫線に通常の0.5ミリ芯の描線では「負け」てしまうので、Bぐらいの濃さで、あえて軸は回さずに偏減りの状態のまま太字にして書くのが良さそうです。この使い方だと、クリップに指が引っかからずに書くことができます。

中を分解するとこのようになっています。がっしりとした外側の作りに比べて、中はプラチナのプレスマンあたりでも見られるような、シンプルな軽めの機構です。これを見て、値段(税抜2,400円)の割に安っぽいと感じる人もいるかも知れません。とはいえ、ここで金属パイプやら何やらを使って不必要に重たくするよりは、この方がいいのではないかと私は思います。ちなみに私の場合、既存の状態ではノックボタンが出過ぎているように思えたので、パイプ(芯が入っている部分)を5ミリほど切って短くしました。また、画像にあるように、消しゴムとノックボタンをつける尾部のパーツにマスキングテープを巻くと、筆記時に中でカタカタと音がするのを防ぐことができます。
なお、この内部機構について一点注意を。今回発売された限定軸のネイビーを触っていて気づいたのですが、このネイビーでは、中のチャックが金属になっています。従来のスクリプトでは樹脂チャックで、クリック感も手応えもない出し心地が自分としては不満だったので、この仕様変更は喜ばしいことです(ちなみに以前買ったオレンジ軸の方は、オートの古いクッション機構シャープの部品を使ってなんとか金属クラッチにしています…)。聞いた話によると、今後ネイビーだけではなく従来の軸でも樹脂チャックから金属チャックへと仕様変更する予定だそうなので、ネイビー以外の軸が欲しい方はもう少し待ってみるのが良いかもしれませんね。
【関連リンク】RHODIA scRiptpoint push-maticの謎 - Platinum Hayaai(もう11年前の記事になるんですね…)
- 2018/10/28(日) 00:00:00|
- 0.2 - 1.8 mm
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メモや考えをまとめるとき、太芯のシャープを使って大きな字でサラサラと走り書きさせるのが好きです。一般的なシャープの芯径である0.5ミリだと、小さな字を書くのには向いていますが、素早くラフに字を書いたり線を引いたりするのには、どうも引っかかりを感じてしまいます。また、大きめの字で書く場合、芯の減りも早くなるので、細芯では芯を出す頻度も多くなります。こういった用途においては、0.9~2.0ミリあたりの芯を使いたいところです。

今回紹介するファーバーカステルのエモーションシャープは、そんな用途に合った1.4ミリの芯です。エモーションといえば木軸というイメージですが、このピュアブラックは金属軸です。全体がマットブラックで統一されていて、胴体部分にはアヤ目(菱形)の溝が入っています。このあたりの意匠が、どこか製図用シャープのようでもあります。

軸はアルミ製で内部は主に樹脂パーツで構成されていますが、口金と軸尾が肉厚の真鍮製のため、全体の重量は36グラムあります。筆記具としてはかなり重い部類に入りますが、短めの軸(芯を出さない状態で12.5センチ)ということもあり、取り回しにくい印象はそれほどありません。

私の場合、軸後方を人差し指の第二関節と第三関節の間に置き、そこを支点として指先には力を入れずに軽く握るようにしています。重心は若干後寄りのため、先の方は持たずに、口金より後ろ・軸の前半分あたりを持つと動かしやすいと思います。ただし筆記状況によっては、クリップが若干引っかかって気になるかもしれません。

機構は回転繰り出しで、軸尾を回して芯を出します。芯は回し切ると芯受けから押し出されるようになっています。芯を取り付けるときは、回しきった状態から若干戻したあと、先端から芯を入れて芯受けに嵌めます。予備の替芯は、口金を外すと中に6本ほど充填することができます。

ちょっと気になるのは、軸尾パーツをぴったり嵌めると、繰り出す際に軸と軸尾が接している部分でこすれる音がする点。どうしても気になる場合は、軸尾パーツと軸との間にほんの少しだけ隙間を開けておくと良いでしょう。

軸尾を回して繰り出す方式は、他の方式に比べ持ち替えるのに手間がかかります。そこで何度も繰り出す作業をするのは面倒なので、私は芯を長めに出して使っています。1.4ミリの太さなら、折れる心配もまずありません。

1.1ミリ以上の太芯は削った方が書き味がいいので、削って使うようにしています。2.0ミリ芯ホルダー用の芯削りを使えば、芯をうまく削ることができます。紙やすりで研いでも良いかと思いますが、勢いで口金を削ってしまう恐れがあるので、注意が必要です。
その他の1.4mmシャープと替芯。カステルとラミーはB、スタビロはHB(それぞれ6本入り)。エモーションが採用している1.4ミリ芯と似た太さの芯では、1.3ミリの芯があります。1.3ミリと1.4ミリとでは、一見したところ呼び寸法の違いだけで互換性がありそうな気がします。しかし、ぺんてるのマークシート用シャープの芯やコクヨの鉛筆シャープ用の芯、ステッドラーのMars micro carbonで確認した限りでは、エモーションの場合、1.3ミリ芯では細くて芯受けに嵌らないようです。セロファンテープを間に噛ませて芯受けに嵌めることもできなくはないのですが、口金の穴が1.3ミリ芯に対して広いため、芯がグラついて書き心地もあまり良くありません。手に入りにくい・種類が少ないというデメリットはありますが、やはりここは1.4ミリ芯を使うしかないようです。
【関連リンク】Faber-Castell - エモーション ピュアブラック ペンシルアフィリエイトの文具評論家ブログ実装版 ファーバーカステル エモーション 138301Stationery Meeting - 1.3mm芯と1.4mm芯
- 2018/10/01(月) 23:00:00|
- 0.2 - 1.8 mm
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ひさびさの高価格帯・高機能モデルとなる、ぺんてるのシャープペンシル「オレンズネロ」です。このシャープペンシルについては、ぺんてるも相当気合を入れているようで、
特別サイトを始めとしてプロモーションも積極的に行われているようです。また、オレンズネロ本体のデザインや、後述するようにグリップの材質や自動芯出し機構などの仕様も、ぺんてるの意欲を感じさせてくれるものとなっています。
オレンズネロについては昨年末あたりから情報が断片的に出始めており、twitterでフォローしている方たちの間でも、いつ発売されるのか、今や遅しと待ち望んでいる状態でした(寸前まで出荷日が未定だったのです)。もちろん私もその待ち望んでいたうちの一人で、入荷日の初日(2月17日)にさっそく購入しました。本レビューでは、その日からしばらく使ってみて、私なりに思ったことを書いてみたいと思います。なお、今回レビューするオレンズネロは0.3mmの方のみになります。0.2mmについては別の機会に(または別の方のレビューに)譲りたいと思います。
機構と書き心地について
ぺんてる「オレンズ」のシリーズに共通するのは、ガイドパイプから芯を出さずに書ける「オレンズシステム」です。パイプから露出した状態ではすぐ折れてしまうような0.2mmや0.3mmの細芯でも、パイプが外側で芯を保護することで、折れずに書けるようになるという仕組みです。この場合、パイプは芯の摩耗に対応してスライド(後退)しなければなりません。このスライドが滑らかでないと、筆記時にパイプが紙に引っかかる感じになり、書き心地が悪くなります。ノーマルタイプ(ラバーグリップ、メタルグリップを含む)のオレンズではパイプが紙面に触れるたびにパイプが後退し続けます。この機構では、一度のノックで飛び出たパイプの分だけ、ノックをしないで書き続けることができます。

これに対し、オレンズネロでは「自動芯出し機構」が採用されています。この機構では、パイプが紙面に触れるときはノーマルタイプと同様に後退するのですが、紙面から離れるとパイプが元の長さに戻り、その戻った分だけパイプの中で芯が先へ繰り出される仕組みになっています。つまり、芯を内部のチャックが保持できるかぎり、ノックをしなくても芯が出続け、書き続けることができる機構なのです。これだけ聞くと非常に便利な機構だと思ってしまうのですが、ここには難点があります。つまりこの機構では、パイプが紙面に触れているときにも戻ろうとする力が働いているため、ノーマルタイプのオレンズシステムよりは引っかかりを感じてしまうのです。オレンズネロのサイトでも、この戻ろうとする口金の中のスプリングの力をいかに抑えるか、それに伴い内部機構をいかに調整するかに苦心した様子が書かれているのですが、実際使ってみると、確かに従来のオートマチック機構に比べて改良されているようには思うものの、やはりこの引っかかりや擦れる感じは、ノーマルタイプのオレンズに比べてどうしても気になってしまいます。ただ、この引っかかりは、持ち方を工夫することでかなり改善できます。

筆記時の先端の部分を拡大すると上図のようになりますが、このとき、パイプの角(◯で囲んだ部分)が紙面をこすると引っかかりを感じてしまいます(とりわけこの図で言えば、左から右へと先端が動くとき、ノーマルタイプですらパイプが後退しにくい状態のため、引っかかりが強くなります)。この角の「当たり」を弱めるには、筆記角度を高くして、芯の接地部分の方を大きくするようにします。つまり、ペンを立てて書くようにすると、引っかかりは軽減できます。

この時のペンを持つ状態(右)は、従来の持ち方(左)よりも先端を手の側に寄せた状態になります。この高い筆記角度をキープするには、先端をなるべく手から遠ざけないようにする必要があるので、先端の可動域は制限されます。つまり、自動芯出し機構を快適に使うには、ストロークを要する大きな字よりも小さな字向けに使うのが望ましいといえるでしょう。
とはいえ、せっかくのフラッグシップモデルが「細かい字専用」というのは、勿体ない使い方のようにも思われます。そこで個人的には、自動芯出し機構だけでなくノーマルタイプの機構もオレンズネロで使えるようにならないかなと思ってしまいます。実際の使用場面でも、ノック一回あたりの芯の量があれば、何度もノックして思考が中断される…なんてこともほとんどないかと思います(それに「思考の中断」を云々するなら、むしろ消しゴムを使う頻度の方が問題となってくるでしょう)。機構を見るかぎり、口金部分をスプリングがないスライドパイプにすると、ノーマルタイプと同じになるように思われます。オプションパーツでノーマルタイプに変えることができる口金も欲しいところです。
グリップとクリップについて
オレンズネロの軸で最大のアクセントとなっているのが、この5センチ以上ある長めのグリップです。「樹脂と金属粉を混ぜ合わせた特殊素材」でできた12角のユニークなグリップになっています。特殊素材をはじめて使ったためなのか、型の継ぎ目のような線や仕上げが若干気になるのですが、しっかりとした質感で良い感触だと思います。12角のグリップについてですが、個人的には筆記中に角が指に当たるような気がしました。おそらく、12角グリップは3角や6角のグリップに比べて側面も狭くなるため、指で押さえる時に面だけではなく角にも触れてしまうのがその理由かと思われます。
また実際持った時、持ったところから後の方が重たい感じがしてペンを動かしにくい印象を受けます。これは特殊素材のグリップが長いために、グリップの後ろのほうが「重たさ」となるからと思われます。もちろんつかむ位置を変えると重たさは軽減はされますが、上述した「筆記角度を高くした状態で細かい字を書く」場合では、どうしてもグリップの先をつかむようになってしまいます。デザインにあれこれ言うのは野暮かとは思いますが、このグリップは短くてもいいのではないかと私は考えます。

クリップはぺんてるのスマッシュと同じもので、小さめです。今までのオレンズシリーズは、クリップが大きくて出っ張っており、さらに軸に固定されて取り外すこともできなかったので、そこだけは何とかして欲しいと思っていました。オレンズネロではデザイン的にも大きなクリップが合わないこともあるのでしょうが、目立たず、また、軸の比較的後部に置かれているため、手にも引っかからない設計となっています。
もうひとつの芯出し機構 - ぺんてるQXシャープ
オレンズネロを取り上げたからには、比較として触れておきたいシャープペンシルがあります。何故かオレンズネロのサイトでは挙げられていないのですが、1990年にぺんてるはQX(PN305)というシャープペンシルを出しています。値段はオレンズネロと同じ3,000円。12角のグリップといい、全身マットブラックの軸といい、オレンズネロを企画した際に、多少はこのQXを意識していたに違いありません。それでは何故このQXが今回「黙殺」された形になったのでしょうか。それはこのQXの機構が「最適芯出し機構」という特殊な機構になっているからと思われます。この機構は実にユニークで、先端を紙面などに押し付けて離すと、つねに芯が「最適量」露出するという機構なのです。今回のオレンズネロでは、芯がパイプから「露出しない」状態で筆記する機構だったので、QXについては言及し難かったのかもしれません(同様の機構をもつテクノマチックも、今回話題になっていません)。
そこで私が期待するのは、この「nero」シリーズが他の芯径でも展開された場合、0.5mmにこの「最適芯出し機構」を採用してくれるんじゃないかということです。0.5mmなら細芯とは違い、芯をパイプから露出させても構わない(最適量なら折れることもない)し、露出させた方がパイプスライドよりも書き味は良くなるのですから、この機構を採用しない手はありません。まさしく0.5mmのフラッグシップモデルにふさわしい機構と言えるでしょう。ただ気がかりなのは、この機構、非常に便利な機構にもかかわらず、QX以降ほかのシャープペンシルに採用されていない点。もしかしたら非常にデリケートな機構で、展開するのが難しかったのかもしれません。とはいえ、今回のオレンズネロのように意欲的な商品を出したぺんてるですから、これに続いて、また新しい形でQXを復活させてくれるんじゃないかと期待せずにはいられません。
- 2017/03/12(日) 18:00:00|
- 0.2 - 1.8 mm
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別のところでも書いたように、Wörther Compactのシャープペンシルのユニットを0.7mmに交換した時、余った0.5mmユニットをLamy notoに入れてみたら、上手い具合にシャープペンシルができました。そこでこれを紹介したいと思っていたのですが、内部機構(Schmidt DSM2006)を取り付けるのにちょっと手間がかかるのと、何よりもこの内部機構自体、廃番ではないのですが手に入れるのが困難な点がネックでした。そこで、別のシャープユニットでこの改造に使えそうなものを探して使ってみたところ、Schmidt DSM2006よりも簡単にできたので、今回はこれを使った改造方法を紹介したいと思います。今回使用するシャープユニットなら、Amazonなどでも比較的容易に手に入れることができます。
【用意するもの】・Lamy notoボールペン
・プラチナ「
アフェクション・スイッチ」専用シャープメカスイッチ(以下「シャープメカ」)
・丸棒やすり
・シールテープ(ない場合はマスキングテープでも可)
丸棒やすりは100均で手に入るようなもので大丈夫です。シールテープは水道工事などで使うもので、粘着剤がないテフロン製のテープですが、これを硬く巻くとパテ状になります。ホームセンターなどで売られていると思いますが、Amazonあたりでも手に入るようです。

notoは分解し、ボールペンリフィルを取り出します(以下説明の便宜上、ボールペンリフィルが入っているグリップ側は「軸A」、ノックボタンがある側は「軸B」とします)。また、軸Aの中にはバネが入っているので、これも取り出します(バネは割り箸などを中に突っ込んで引っ掛けると取り出せます)。

ボールペンリフィルが入っていた部分にシャープメカを入れるのですが、この状態では先端の穴が小さくシャープメカが出てこないので、軸Aの中の方から丸棒ヤスリを入れて穴を拡げます。穴を広げ過ぎないよう、時々シャープメカを入れてみながら徐々に削っていきます。少しだけ力を入れてシャープメカが穴に通るぐらいの大きさにします。


シャープメカにテープを巻き、軸Aに嵌めます。テープは入れた時に若干きつくなるくらい巻きます。シャープメカは、先端から3mmほど出るくらいまで押し込んでいきます。ユニットが先端から出た状態で、少し強めに押してみても引っ込まなければOKです。引っ込む場合はもう少しテープを巻く必要があります。

軸Bのノックボタンは、長い状態(ボールペンが収納された状態)ならば一度ノックして短い状態にしておきます。この状態で軸Aを取り付けると完成です。
ノックしてみて上手く芯が出るか、芯が出た状態で先端を押してみて芯が引っ込まないか確認します。芯が出なかったり、出ても押せば引っ込む場合は先端があまり出ていない状態なので、軸Aを外してシャープメカを少しだけ押し込んでみてください。また、逆に先端が出すぎている場合は、ノックボタンに「遊び」がでたり、ノックボタンを引っ張ると長い状態に戻ったりするので注意が必要です。

重量は約15g、重心位置はほぼ真ん中です。クリップが軸から飛び出ていない設計なので、筆記時に軸を回しても手に引っかからず、非常に書きやすいと思います。使ってみると、これはボールペンというよりもシャープペンシルにこそ向いているようにも思えてしまいます。
- 2016/03/08(火) 00:00:00|
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