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the uncomfortable chair

好きなものや思ったことなど。

Pentel Kerry 1.3mm mechanical pencil

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ウタペさんのブログで1.3mmケリーの改造シャープを見て、その口金の美しさに自分も作ってみたいと思いました。ウタペさんの場合、1.3mmの内部機構に金属チャックのMilan Capsuleを使っているのですが、今回はこれが手に入らなかったので、別のシャープペンシルを使って改造してみました。ウタペさんのブログの後追い内容とはなりますが、違った作成方法でもあるので、ここは私なりの作り方をなるべく詳細に紹介してみたいと思います。

基本的には以前紹介した「ぺんてるケリー改造2mmシャープ」と手順が似ているので、以下を読む前に当該エントリに目を通していただくのがよいかと思います。

Pentel Kerry 2.0mm mechanical pencil

それでは作り方の説明をしていきます。

【用意する工具など】

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棒やすり
今回も「ケリー2mmシャープ」同様、ダイソーで購入した「ダイヤモンドやすり 3本」と「ダイヤモンドヤスリ 半丸型 160mm」を使用しましたが、もう少し太めの棒やすりがあったほうが作業が楽に済むかもしれません。

パイプカッター
部品に使うシャープペンシルの軸と金属パイプの切断に使用します。今回はダイソーで400円で売られていたものを使用しました。ホームセンターでも1,000円程度で手に入ります。

紙やすり(400番ぐらい)
エポキシ系接着剤
カッター
ラジオペンチ
シールテープ
その他: マスキングテープ、ウエットティッシュ、1.3mm芯(実際に使うもの)

接着剤は2種類の液を混ぜるエポキシ系接着剤を使います。いわゆる「瞬間強力接着剤」はこの工作には向いていないので、使わないほうが良いでしょう。

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さらに今回、口金の加工にミニドリル刃を使います。このミニドリル刃は、Amazonで400円台で手に入れることができました。この刃の0.9〜1.3mmを使って口金を広げていきます。


【作り方】

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今回内部機構に使うのは、Xeno CXの1.3mmシャープです。韓国のメーカーのものですが、輸入雑貨を扱う店などで800〜1,000円ほどで手に入ります。これも金属チャックで、口金には戻り止めパーツもついています。ただ、この内部機構がうまく作動するように取り出すのにちょっと工夫が要ります。


内部機構の作り方

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今回取った方法は、分解するのではなく軸の一部を切り取って流用する方法です。パイプカッターで画像の部分あたりに刃を当て切断したものをケリーの中に入れます(パイプカッターの使い方はこちら)。切断の際に、中のパイプを切らないよう注意が必要です。切断するまで刃を入れる必要がなく、ある程度「溝」ができたらパキッと折り取るのが良いでしょう。「ケリー2mmシャープ」の場合は、内部機構(タジマすみつけシャープ)が小さかったためそのままシールテープを巻いて入れていたのですが、今回のパーツはこのままの状態では太いので、カッターややすりで削って細くしていきます。

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こんな感じで細くします。先の口金を嵌めていた部分(螺旋がある部分)の太さに全体を合わせるように削っていきます。耐久性の問題もあるので、先の方はあまりいじらないほうがよいでしょう。この部分は組み立てると隠れてしまうので、偏って削らないようにする以外は、仕上がりはあまり気にしなくてもよいかと思います。刃をあまり立てずに、時々やすりを使いながら少しずつ削って行きましょう。

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この太さではまだ軸に入り切らないので、ケリーの軸の内側も削っていきます。軸を分解し、先軸の後ろ側(分かりづらい言い方ですね…)からやすりを入れて中を拡げていきます。先述の通り、100均のやすりでも出来なくはないのですが、時間がかかる(その上慣れないと手が痛くなる)ので、これより太めの棒やすりがあれば、それを使ったほうが良いかもしれません。

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内部機構を嵌めたとき、クラッチが画像の状態(ノックボタンを押してないときに、軸から若干奥の位置にある状態)になるまで、内部機構と軸を削っていきます。これ以上出すぎるとクラッチが口金に引っかかり、これよりも奥だと、使えない残芯が長くなったり、クラッチを締めているリングが口金の内側に引っかからないため、クラッチが開かず芯が出なかったりします。


口金の作り方

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Xeno CXの口金から、戻り止めパーツ(樹脂製)を取り出します。ドリル刃の0.7mmあたりを使って先から斜めに突けば、簡単に取ることが出来ます。

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ケリーの口金にあるパイプは、ラジオペンチで引き抜きます。この時、ペンチで折ったりニッパーで切り取ったりしてパイプの欠片を口金に残さないよう注意してください。パイプの残りがあると、ドリルで加工しにくくなります。パイプを引き抜いた口金を拡げていくのですが、いきなり1.3mmのドリル刃を使うのではなく、だいたい0.9mmあたりから始めて徐々に拡げていくのが良いでしょう。ピンバイスがあると便利ではありますが、ピンバイスなしでもドリル刃のみで加工はできます。穴を拡げていくと、口金先端の金属が薄くなり裂けてしまうことがあるので、紙やすりで先端を少しずつ削りながら拡げていきます。

1.2mmのドリル刃を使うあたりから、実際に1.3mm芯が入るかどうか試してみましょう。1.3mm芯はメーカーによって太さが違うので、注意が必要です。例えばXeno CXに入っている芯や、コクヨの鉛筆シャープに入っている芯は、ぺんてるの芯に比べて若干太くなっています(参照)。ここでは、実際使う芯を用意しておきましょう。1.3mmのドリル刃が通った段階でも、まだ芯が入らないことがあるかもしれません。その時は1.4mmのドリル刃をつかうのではなく、1.2〜1.3mmのドリル刃を回さずに「出し入れ」する要領で内側を削って調整していきます。芯が通るようになったら、Xeno CXから取り出した戻り止めパーツを口金の中に嵌めます。


内部パイプの加工

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ケリーの内部パイプをXeno CXの内部パイプに取り付けます。ケリーの金属パイプは尾部から6cmあたりをパイプカッターで切り取ります。パイプの切断面は刃に押されて細くなっているので、この細くなった部分は紙やすりを使って削ります。

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「ケリー2mmシャープ」のときはすみつけシャープのパイプが太かったのですが、今回は逆にXeno CXの内部パイプが細いので、軸にシールテープを薄く巻いてその上からケリーのパイプを嵌めていきます(シールテープは巻きにくいのでマスキングテープを使ってもOK)。この際、内部機構は全長9cmくらいになるようパイプを切っておきましょう(後でパイプをさらに切って調整します)。

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金属パイプを嵌めたら、内部機構にシールテープを巻き、ケリーの軸に入れます。シールテープはあまり巻きすぎないようにしましょう。


組み立て・完成

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口金をマスキングテープで仮止めして、芯を出してみましょう。うまく出ない場合は、内部機構を取り出して再度嵌めて調整(クラッチが偏って出ていないかなど確認)してみましょう。芯がうまく出るようになったら、芯をクラッチした状態で尾部の長さを調整します(クラッチしていない状態で調整すると、クラッチしたときにノックボタンが潜りすぎてしまう場合があります)。

芯を出した状態で、口金をエポキシ系接着剤で取り付けて完成です。今回は「ケリー2mmシャープ」に比べてクラッチが前の方に出ているので、接着剤が内側につかないよう注意してください。外に接着剤がはみ出た場合は、固化する前に不織布のウエットティッシュなどで拭き取リましょう。取り付けたら接着剤が固まるまでマスキングテープで固定しておきます。

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1.3mmシャープは樹脂チャックのものが多く、金属チャックを内部機構にしたい場合はパーツとして使えるシャープペンシルが限られます。今回のXeno CXは金属チャックで良かったのですが、機構が軸と一体になった作りなので、これをうまく機能するように取り出すにはどうしたらいいかかなり悩みました。思いつけば意外と単純な方法ではあるのですが、こういった方法を思いつくのが、その方法に従って完成させることよりも、筆記具改造の醍醐味なのかなぁとも思ったりします。

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  1. 2019/04/09(火) 19:00:00|
  2. 0.2 - 1.8 mm
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RHODIA scRipt mechanical pencil

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直線的な六角軸とアルマイト処理された軸の色が美しい、ロディアのスクリプトシャープです。ぺんてるケリーを思わせるような口金の曲線も凝っていて、私の好みです。2016年に発売されたオレンジ、ブラック、シルバーと2017年限定のブラウンに加え、2018年はネイビーが限定色として発売されました。

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太めの六角軸は指との接触面も大きく、その分持ちやすくなっています。また、粗めにヘアライン加工された表面も程よい感じで、ツルツルと滑るのではなく、サラサラとした触り心地です。がっしりとして質感の良い金属軸ではありますが、18グラムで重い印象はあまり受けません。

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先端のスリーブはスライド式になっています。製図用シャープ並みにスリーブが長く、最長で4ミリほどの長さになります。また、内部はクッション機構です。スライドスリーブとクッション機構の組み合わせなので、以前紹介したプラチナ「ハヤーイ」のように「簡易先端プッシュ」ができます。書いているうちに芯の量が足りないと思ったら、先端を紙面に押し付け、離してみましょう。するとスリーブだけが後退して芯が出てくるので、ノックしなくてもまた書き続けることができます。スリーブが長いので、三回ぐらいはノックせずに先端プッシュで書きづづけることができるかと思います。

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軸はやや短め(全長128ミリ)で、手に収まる扱いやすい長さです。短めの軸やスライドスリーブになっているのは、シャツやズボンのポケットに入る長さや、ポケットの中でパイプが引っ掛からないのを意識しているのかもしれません。またクリップが比較的長めになっているのも、ポケットから抜け落ち難くするためのように思えます。ロディアの製品ですから、サイズからして「ブロックロディア」No.11やNo.12あたりと一緒にポケットに入れることも念頭に置いているかもしれません(画像のブロックロディアはNo.12)。

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短軸でありながらクリップは長めに作られているため、筆記時には手に当たりやすくなっています。また、軸に合わせて幅広の平らな面になっているため、この面を下にしてクリップを指に乗せるときは、指とクリップとの接触が大きくなります。軸の方はヘアライン加工で滑りもあるのですが、このクリップは艶出し加工で滑りにくいので、接触が大きいと指にくっつき、引っかかりを覚えます。クリップの表面もヘアライン加工になっていると、この引っかかりは軽減されるかもしれません。

ちなみにブロックロディアを使うときは、例の濃い罫線に通常の0.5ミリ芯の描線では「負け」てしまうので、Bぐらいの濃さで、あえて軸は回さずに偏減りの状態のまま太字にして書くのが良さそうです。この使い方だと、クリップに指が引っかからずに書くことができます。

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中を分解するとこのようになっています。がっしりとした外側の作りに比べて、中はプラチナのプレスマンあたりでも見られるような、シンプルな軽めの機構です。これを見て、値段(税抜2,400円)の割に安っぽいと感じる人もいるかも知れません。とはいえ、ここで金属パイプやら何やらを使って不必要に重たくするよりは、この方がいいのではないかと私は思います。ちなみに私の場合、既存の状態ではノックボタンが出過ぎているように思えたので、パイプ(芯が入っている部分)を5ミリほど切って短くしました。また、画像にあるように、消しゴムとノックボタンをつける尾部のパーツにマスキングテープを巻くと、筆記時に中でカタカタと音がするのを防ぐことができます。

なお、この内部機構について一点注意を。今回発売された限定軸のネイビーを触っていて気づいたのですが、このネイビーでは、中のチャックが金属になっています。従来のスクリプトでは樹脂チャックで、クリック感も手応えもない出し心地が自分としては不満だったので、この仕様変更は喜ばしいことです(ちなみに以前買ったオレンジ軸の方は、オートの古いクッション機構シャープの部品を使ってなんとか金属クラッチにしています…)。聞いた話によると、今後ネイビーだけではなく従来の軸でも樹脂チャックから金属チャックへと仕様変更する予定だそうなので、ネイビー以外の軸が欲しい方はもう少し待ってみるのが良いかもしれませんね。


【関連リンク】
RHODIA scRipt
point push-maticの謎 - Platinum Hayaai
(もう11年前の記事になるんですね…)

  1. 2018/10/28(日) 00:00:00|
  2. 0.2 - 1.8 mm
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Faber-Castell e-motion twist pencil (pure Black)

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メモや考えをまとめるとき、太芯のシャープを使って大きな字でサラサラと走り書きさせるのが好きです。一般的なシャープの芯径である0.5ミリだと、小さな字を書くのには向いていますが、素早くラフに字を書いたり線を引いたりするのには、どうも引っかかりを感じてしまいます。また、大きめの字で書く場合、芯の減りも早くなるので、細芯では芯を出す頻度も多くなります。こういった用途においては、0.9~2.0ミリあたりの芯を使いたいところです。

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今回紹介するファーバーカステルのエモーションシャープは、そんな用途に合った1.4ミリの芯です。エモーションといえば木軸というイメージですが、このピュアブラックは金属軸です。全体がマットブラックで統一されていて、胴体部分にはアヤ目(菱形)の溝が入っています。このあたりの意匠が、どこか製図用シャープのようでもあります。

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軸はアルミ製で内部は主に樹脂パーツで構成されていますが、口金と軸尾が肉厚の真鍮製のため、全体の重量は36グラムあります。筆記具としてはかなり重い部類に入りますが、短めの軸(芯を出さない状態で12.5センチ)ということもあり、取り回しにくい印象はそれほどありません。

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私の場合、軸後方を人差し指の第二関節と第三関節の間に置き、そこを支点として指先には力を入れずに軽く握るようにしています。重心は若干後寄りのため、先の方は持たずに、口金より後ろ・軸の前半分あたりを持つと動かしやすいと思います。ただし筆記状況によっては、クリップが若干引っかかって気になるかもしれません。

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機構は回転繰り出しで、軸尾を回して芯を出します。芯は回し切ると芯受けから押し出されるようになっています。芯を取り付けるときは、回しきった状態から若干戻したあと、先端から芯を入れて芯受けに嵌めます。予備の替芯は、口金を外すと中に6本ほど充填することができます。

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ちょっと気になるのは、軸尾パーツをぴったり嵌めると、繰り出す際に軸と軸尾が接している部分でこすれる音がする点。どうしても気になる場合は、軸尾パーツと軸との間にほんの少しだけ隙間を開けておくと良いでしょう。

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軸尾を回して繰り出す方式は、他の方式に比べ持ち替えるのに手間がかかります。そこで何度も繰り出す作業をするのは面倒なので、私は芯を長めに出して使っています。1.4ミリの太さなら、折れる心配もまずありません。

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1.1ミリ以上の太芯は削った方が書き味がいいので、削って使うようにしています。2.0ミリ芯ホルダー用の芯削りを使えば、芯をうまく削ることができます。紙やすりで研いでも良いかと思いますが、勢いで口金を削ってしまう恐れがあるので、注意が必要です。

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その他の1.4mmシャープと替芯。カステルとラミーはB、スタビロはHB(それぞれ6本入り)。

エモーションが採用している1.4ミリ芯と似た太さの芯では、1.3ミリの芯があります。1.3ミリと1.4ミリとでは、一見したところ呼び寸法の違いだけで互換性がありそうな気がします。しかし、ぺんてるのマークシート用シャープの芯やコクヨの鉛筆シャープ用の芯、ステッドラーのMars micro carbonで確認した限りでは、エモーションの場合、1.3ミリ芯では細くて芯受けに嵌らないようです。セロファンテープを間に噛ませて芯受けに嵌めることもできなくはないのですが、口金の穴が1.3ミリ芯に対して広いため、芯がグラついて書き心地もあまり良くありません。手に入りにくい・種類が少ないというデメリットはありますが、やはりここは1.4ミリ芯を使うしかないようです。


【関連リンク】
Faber-Castell - エモーション ピュアブラック ペンシル
アフィリエイトの文具評論家ブログ実装版 ファーバーカステル エモーション 138301
Stationery Meeting - 1.3mm芯と1.4mm芯

  1. 2018/10/01(月) 23:00:00|
  2. 0.2 - 1.8 mm
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SHARBO X LT3とマルチペンを巡る雑考(4)

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回転式のマルチペンは、透明軸で見るとその機構を楽しむことができます。回転させると、代わる代わるそれぞれのユニット尾部が「山」を登り、「頂点」に立ち、「山」を下って行く様子は、見ていて飽きません。このあたりは、スライドレバー式や振り子式よりも美しい機構かもしれません。

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MONO graph MULTIのクリップを外した状態(右上が先端側)。グレーのパーツが「山」で、白のパーツが「登り下り」する可動ユニット。「山」の頂点には窪みがあり、この窪みにはまると、ユニットは固定される。

回転式には、「行き止まり」があるタイプと、「行き止まり」がなくいつまでも回し続けられるタイプがあります。シャーボXは行き止まりがないタイプです。回し続けられるタイプのメリットは、例えば三色の場合、ユニットをA→B→C→A→B…と回せるので、CからAに替えるのが一回で済む点です。行き止まりがあるタイプでは、戻ってC→B→Aと回さなければなりません。

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この二本はどちらも、三つのユニットを持つ透明軸の回転式ですが、uni Colorの三色シャープ(画像下)は「行き止まり」があるタイプで、プラチナのダブルR3アクション(画像上)は「行き止まり」がなく回し続けられるタイプです。この二本を見比べてみると分かるのですが、基本的な構造(ユニットを出す仕組み)において両者はほとんど違いはなく、uni Colorの方が両端でそれ以上回らないよう可動部を突起で抑えるようになっている、という点ぐらいにしか違いはありません。

上で述べたように、場合によっては「戻って、一つ(またはそれ以上)のユニットの出し入れを経由して替える」のは面倒なので、同じ構造にも関わらず、なぜあえて「行き止まり」を作るのだろうかと思ってしまうのですが、この「行き止まり式」にもメリットがないわけではありません。両端のユニットは、「行き止まり」まで回し切ることで出てくるので、ついつい回し過ぎて山を「通過」してしまうことがありません。とりわけ、静音設計のシャーボXでは「頂点」に立ったユニットが「かっちり」と固定されているかどうか分かりにくいため(この「かっちり」は、頂点の窪みでユニットがしっかり固定される様子でもあり、その音でもあります)、先端を露出させたつもりで書いてみたら、先端が潜ってしまう…というケースが結構ありますからね。

ユニットを替えやすいか・先端を確実に出せるか・切替時の音が気にならないか…というそれぞれの要素は、どれかを取ればどれかを犠牲にしなければならなくなるのが、なんとも歯がゆいところですね。

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オートのカプセル4。四つのユニット(0.5黒、赤、0.7黒、シャープ)を持つ回転式でありながら「行き止まり式」のため、0.5黒→シャープに替えるには、間に二つのユニット出し入れを挟まなければならず、まあ、このあたりがオートらしいところと言うか…。

  1. 2018/05/15(火) 23:00:00|
  2. multipen
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SHARBO X LT3とマルチペンを巡る雑考(3)

多色ボールペンや多機能ペンには、さまざまな種類の先端(ユニット)を出す/収納する機構があります。今回は、それらの機構について取り上げてみたいと思います。

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上は無印良品の六角6色ボールペン(黒・赤・ピンク・オレンジ・水色・青)、下はイタリア製の10色ボールペンMAGIC 10-IN-1(赤・黒・青・茶・水色・オレンジ・黄・藤色・黄緑・ピンク)。MAGIC 10-IN-1は、後ろのスライドレバー部分を回して、出したい色のユニットに合わせて押し出す仕組み。

まず多色ボールペンや多機能ペンで最もポピュラーな機構は、「スライドレバー式」です。大抵は尾部に複数のスライドレバーがあり、出したい色のレバーをスライドさせて先端を出す仕組みです。この機構の利点は、出したい色を一度で確実に出すことができる点と、別の色の切り替えが一つの動作で済むことです。この確実さと切り替えが容易なこともあって、一つの軸に多数(とりわけ5つ以上)のユニットを入れたマルチペンのほとんどは、スライドレバー式を採用しています。難点は、どうも安っぽい作りのものが多いというのと、切り替え時の音が大きいという点でしょうか。かつて売られていたような、高級感のあるスライドレバー式のボールペンが現行品でも欲しいところです。

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上はパイロットの振り子式4色ボールペン(黒・赤・青・緑)、下はドイツManufactumのボールペン3色(黒・赤・青)+ シャープペンシル(0.7mm)。パイロットの4色は4色入りとは思えない細い軸が特徴的。Manufactumの多機能ペンは、色表示ではなくドイツ語の表記(SCHWARZ・ROT・BLAU)なのがカッコいい。

ちょっと高級なものになると、「振り子式」があります。振り子式でよく知られているのは、なんといっても「LAMY 2000」の4色ボールペンでしょうか(あいにく私には買う機会がなく未だ所有していません…)。出したい色の表示を上に向けてノックするとその色が出てくるというなかなか凝った仕組みで、パイロットの多機能ペンで初めてこの機構を知った時は、自分が今見ている色表示をペンが知っているということに奇妙な感覚を覚えました。この機構では一つのノックボタン(と多機能ペンではリリース用のボタン)だけで複数のユニットを出すことができるので、軸のデザインがシンプルにできるメリットがあります。ただ、出したい色の表示をいちいち上に向けるのが思ったより面倒なのと、ペンによっては振り子が中でカチャカチャ音を立てるのが気になるのが難点です。また、違うユニットに切り替える時は、ノックボタンを押して収納→別の色の表示を上に向ける→ノックして出す、という作業が、スライドレバー式よりも手間がかかります。

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上はゼブラのニュースパイラル2+S(ボールペン2色+シャープ)。中のボールペンリフィルは4Cで、シャープユニットはシャーボXと互換性があるので、0.7mmや0.3mmに変えることもできる。

シャーボXにも採用されている「回転式」は、前軸または後軸を回すことでユニットを切り替える機構です。この機構では、回し続けることができるものと回していると「行き止まり」になるものがあります。この機構上、隣のユニットを一つ以上「飛ばして」出すことができないので、4色(または3色+シャープ)以上になると、切り替え時に場合によっては何回も出し入れする必要があるのが面倒な点です。振り子式と回転式は、機能的観点と実用的観点から考えても、5色以上のものは恐らく作られていないかと思います。

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ついでに、今回もうひとつ紹介したい機構があります。最近まで知らなかった機構なのですが、このボールペン、ノックをするたびに違う色(黒・赤)が交互に出てくる仕組みなのです(movie)。この機構の正式名称は分からないのですが、仮に「スイッチノック式」と呼んでおきます。これも振り子式同様、ノックボタン一つで複数色を出すことができるのですが、もしこれが三色以上になると、切り替えの際にはかなり面倒なことが想像できます。三色以上のスイッチノック式があったかは不明ですが、あったとしても実用的ではなかったろうことは容易に窺えます。多色ボールペンで一派を作ることなく、今では歴史に埋もれた存在になったのも由なしとしないのでしょうが、内部の作りなど、非常に興味深い機構ではあります。

それぞれの機構を見てみると、これこそが最高、というものが決してあるわけではなく、月並な表現ですが、それぞれに一長一短があります。マルチペンを選ぶ際には、切り替えがすぐ出来たほうがよいか、切り替え時に音が出ないほうがよいか、実際何色あれば十分か、好きな軸はどんなタイプか…などといった諸要素を挙げてみて、その中で自分にとってどれを優先的な要素とするか考えて選ぶのが良いかと思います。
  1. 2018/04/18(水) 00:00:00|
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